(C)2015 Tokyo Rainbow Pride

北陸新幹線延伸開業によって、富山県には多くのものがもたらされました。

その一つが、前年比3倍のGWの観光客。東京から2時間ちょっとで気軽に寄れる観光地として、富山は伊豆や箱根とともに首都圏からの観光地として選択肢に加えられることとなりました。

もう一つが、企業の移転です。本社の中枢の多くを黒部市に移転したYKKをはじめ、大規模なコールセンターや製薬工場が、北陸新幹線の定時性と震災時のバックアップ機能に期待して首都圏からやってきました。

ここまでは、あくまでも経済的な側面です。しかし、北陸新幹線が容易にした首都圏との人的な交流により、これ以外に富山県にもたらされた価値があります。

ある五月の富山の夕方のローカルニュース。番組は、一人の富山県在住の男性が北陸新幹線に乗って、東京に向かうシーンを映していました。男性の名前は沢田弘樹さん(仮名)。沢田さんは、いわゆるLGBTと呼ばれる性的マイノリティーに該当する方で、この日は東京の代々木で行われていたLGBTのパレードであるレインボープライドというイベントに参加するために北陸新幹線へと乗り込んだのでした。

レインボープライド
※LGBT Lesbian Gay Bisexual Transgenderの略称。

このLGBT、日本人の13人に1人の割合で該当者がいるということで、富山ケンミン108万人を単純に計算しても、おおよそ数万人の規模で富山県内にもLGBT該当する方がいらっしゃるということになります。

沢田さんは代々木のパレードで、富山をアピール。
 
(c)KNB

曰く「思ったより沿道の人が多く、拍手をもらえてうれしかった。」「この看板を見て富山で活動している人が声をかけてくれた」。

この沢田さんの一日の流れは、何を意味しているのか。

一つは、北陸新幹線によって首都圏とのアクセスが容易になったため、富山ケンミンが気軽に東京でのイベントに参加しやすくなったということでしょう。この気軽にという部分が大事で、ビジネス需要以外で東京でのイベントに参加することはなかなかハードルが高かったのではないでしょうか。
事実、沢田さんも「初めてのこういうイベントでドキドキした。」とコメントされています。

もう一つは、沢田さんが東京の代々木で、同じ活動を富山で行っている方と出会ったという部分で、北陸新幹線によって東京という場所が県内に在住されているマイノリティーな方々のサードプレイスとして機能しているということです。
地縁、血縁が色濃く残る地方都市において、LGBTも含めたマイノリティーな方々が堂々と集える場所はまだまだ少ないでしょう。沢田さんも、このイベントに参加して「ひとりじゃない。少数じゃない。」と感じることができたとおっしゃっていっました。いわば、北陸新幹線が創り出したもう一つの価値です。

以上の二つは、今まで富山ケンミンとして富山に産まれた人だったら、進学か就職で東京に行かない限り、なかなか経験できることじゃなかったはずです。それが、今では、例えば、富山での生活を送りながら週末土曜日に日帰りで経験することができるんですよね。
この富山で生活を送っている方が週単位という部分も大事で、進学や就職で東京に行った方が富山に帰省するのって、盆暮れ正月GWの4か月クールの単位だったはずです。それが、毎週、どこかの富山ケンミンが東京で触れた価値観やセンスを持ち帰ってくるのですから、完全に富山県の文化を変えてしまうほどのパワーがあります。

最後に、沢田さんがパレードで富山をアピールしたことによって、全国のLGBTの方々に富山の名前を知っていただき、さらにはその中から新たに富山に触れてみようと思われた方も出てくるかもしれません。

県内在住のマイノリティーに該当する方々の日々の暮らしをかがやかせてくれた北陸新幹線、富山の文化そのものをさらにかがやかせてくれそうです。