思えば学生のころ、富山と東京を往復するのに長岡経由の「かがやき」を利用するなどということはほとんどなかった思います。

長期休暇シーズンなら青春18きっぷを使い8時間以上揺られて、それ以外のシーズンは急行「能登」で夜汽車に揺られて富山(又は東京)に向かわれていた学生の方も多かったと思います。
実際に、新幹線を利用して北陸と東京を往復するのは当時も今も学生の方にとって金銭的負担が大きく、このような廉価な交通手段の存在は当時としてもとても有り難いものでした。

北陸新幹線の開業ウィークには多くの30代40代の首都圏からの方を車内でお見かけしましたが、その方たちもおそらく学生当時このような「貧乏旅行」(このような表現は本当は使いたくないのですが、分かり易いように。むしろ、あのころの鈍行列車の中で感じた高揚感は今となっては絶対に手に入らない貴重な瞬間でした。)で北陸を旅行され、今社会人となってお金を稼ぐようになり、改めて新幹線で北陸を訪れられたケースが多かったと思います。

このように、廉価な交通手段というのは、5年後10年後のリピーターを作る大事な手段となっているのですが、時代の流れとともに急行「能登」は消滅し、さらには富山と長野と新潟の多くの路線で青春18きっぷは使えなくなりました。

そのような中、新幹線や飛行機に対抗して第三の交通機関として生き延びているのは高速バスではないでしょうか。それも昨今は大手のバス会社が運行するレガシィな高速バス以上に、新興のバス会社が運行するいわばバス業界の「LCC」が盛況です。

今回、平日の夜ということもあって、富山から東京まで3300円、所要時間は6時間30分というバスを発見したので実際に乗車してみました。北陸新幹線と比較して3倍の時間がかかりますが、コストは三分の一以下なので、バランスはとれている価格設定です。

深夜近くの富山駅北口です。右側に見えるのはポートラムの乗り場。もちろん終電は発車した後です。真ん中に映る人影は高速バスを待つ女性の方です。深夜の富山駅北口の周辺は、深夜バスを待つ女性の姿が本当に多かったです。

あいの風とやま鉄道もすべて運行を終了している時間です。地方は首都圏と比較して終電の時間がかなり早いのです。

しかし、待合室には多くの高速バスを待つ方が。半分は女性の方でした。
平日の深夜バスで東京に向かう方は、普段どのような仕事をなさっているのでしょうか。

大手のバス会社は新幹線口でもある富山駅南口に乗り場があるのに対して、新興バス会社はここ北口に乗り場を設けています。あのウィラートラベルもここ北口から発着。

この時間は各社のバスがひっきりなしに富山駅北口に到着。多くは、金沢と高岡を経由してきます。こちらは、中日本ハイウェイバス。

これが、今回乗車するオリオンバス。格安スキツアーでおなじみの会社。このバスにチケットというものはなく、係員の点呼を受けて乗車するスタイル。富山からの乗車は12人。うち3組が明らかに舞浜のテーマパークまで行こうとされていた、女性同士のペア。あのテーマパークの集客力を改めて実感。

座席の様子です。毛布とスリッパ、ついでに充電用コンセント付きです。北陸新幹線のエントリーで、コンセントの電圧変化が激しいと書きましたが、こちらのバスのコンセントの電圧は非常に安定していて、停車時や出発時も全く電圧の変化は起こりませんでした。ハイテクの権化のようなE7系がコンセントでは、アナログな高速バスに及ばなかったということになりますが、新幹線というのはそれだけ多くの電気を消費しているとうことでもあるのでしょう。

車内は満席。富山駅を出ると、バスは国道41号線を南下し北陸自動車道の富山インターを目指します。途中、注意事項を説明したビデオを流しながら、最初の休憩は30分後の有磯海サービスエリア(富山県魚津市)とのアナウンス。富山駅からの乗車組にとっては早過ぎる休憩ですが、金沢からの乗車組にとっては乗車後2時間ほど経った頃なので、それを考慮してのことでしょう。

有磯海サービスエリアに到着しました。同じ様な高速バスが隣にも止まっています。

深夜の有磯海サービスエリア。人は、なぜ深夜のサービスエリアに降り立つと、えもいわれぬ高揚感に襲われるのでしょうか。鉄道とはまた違うワクワク感があります。

店内には色々な美味しそうなものが。最近の高速道路のサービスエリアはJRの駅以上に、お土産が充実していて見ているだけでも楽しめます。

そして、ついつい買ってしまうぶりずし。

本来はライバルのはずの「鉄と陸」ですが、北陸新幹線を祝ってしまう余裕の風格。北陸の高速交通を30年以上担ってきた自負からでしょうか。

圧巻は、E7系オンザ北陸自動車道!ライバルのミニチュアまで売ってしまうNexco中日本の余裕。さすが、北陸新幹線の開業記念でETCの割引企画出すほどの会社です。

この後バスは消灯しカーテンを閉め切ったまま、次の休憩中である長野県の松代サービスエリアに向けて走り出しました。車内は真っ暗何ですが、変な高揚感がありなかなか寝つけません。車内では睡眠をとっている方もいるのでスマートフォンを見るわけにもいきません。

深夜3:00、松代サービスエリアに到着です。ここでも多くのバスが休憩をとっていました。カメラの性能の関係で文字が滲んでいますが、行き先は全て舞浜のテーマパークとなっています。かのテーマパークは日本一深夜バスが発着する場所となっているのでしょうか。

こちらのサービスエリアは、深夜営業のお店はなく、ただ自販機が煌々と闇夜を照らしているだけでした。

次の休憩地は埼玉県の三芳サービスエリアです。バスが出発するした後は、さすがに眠りに入りました。

朝5:15三芳サービスエリア着。もう外が明るくなっています。

24時間営業のコンビニもあるため、多くの車が休憩をとっていました。中には、富山や石川ナンバーの車も数台見かけました。北陸新幹線開業後も、高速道路は北陸観光の重要な交通手段として多くの人に利用されることでしょう。

この後バスは最初の降車地である新宿西口に向かいます。この時間からは眠りにつく人もまばらで、みなさんスマートフォン等を見ながら時間を過ごされていました。

定刻の6:20に、新宿西口に到着。場所はあの東京モード学園が入るコクーンビルの前です。

これぞ東京と言った風景を目の前にして、また高揚感を覚えます。急行「能登」で上野駅に降り立った当時の若者も同じ様なことを感じたのでしょうか。

早朝の新宿駅西口です。深夜バスでの移動は、暗闇を走る続けたら突如目的地がやってくるため、昼間の鉄道での移動のケース以上に大きな高揚感を感じると実感しました。

しかし、寝不足も相まって、お昼くらい前から猛烈な睡魔に襲われたのも事実です。深夜バスは時間を有効利用できる利点もありますが、到着した当日は疲労がたまっているのも事実なので、出来ることなら観光地へ向かう時よりも、観光地から自宅へ帰る時に利用した方が良さそうです。

富山からの3300円の帰宅便、多少疲れますが、あのころの高揚感は味わえますよ。