かつて、サスペンスの女王と呼ばれた作家山村美沙は、自らの新刊の新聞広告をすべての日刊紙に目を通して隈なくチェック。広告に関して自分の新刊の扱いに納得がいかない場合はすぐさま出版社の担当者を呼び出し、広告の再出稿を命じたと言います。

また、関西の視聴率男と呼ばれたやしきたかじん氏は、自宅に在阪のテレビ局と同数のビデオレコーダーを設置。放送されているワイドショー、ニュースをすべてチェックし、今何が流行っているか、そして自分がテレビでどう扱われているかを日々研究されていたそうです。

全く異なる二つのエピソードは、物事を世に知らせるためには、広報活動は避けては通れない道であることを示しています。

さて、開業から半月経た北陸新幹線、首都圏のメディアではどう扱われているか。今回、紹介するのは、北陸新幹線を特集した「ぶらり途中下車の旅」2015年4月4日放送分です。

関東地区のローカル番組なので、地元富山では放送されていません。(12日遅れでBS日テレでの放送はあるようです。)
よって、首都圏の視聴者に的を絞った構成になっているはずなので、興味が湧くところです。さらに、北陸新幹線特集なので、隣県の金沢も取り上げられるため、65分という放送時間をどう割り振っているのかも注目ポイントです。

オープニングは「悲しみ本線日本海」のBGMとともに、旅人のなぎら健壱さんが北陸新幹線の金沢駅ホームに降り立ちます。北陸というと、どうしても首都圏の方は「悲しみ本線日本海」のイメージなのかと少し複雑な気分にもなります。

なぎら健壱さんは、「鼓門」「近江町市場」「ひがし茶屋町」というお馴染みの金沢セットを紹介。ここら辺は、全国放送の開業特番でも散在出尽くしているので、食傷気味に感じられた方も多かったのでは。

 © Nippon Television Network Corporation

途中挿入された番組のオープニングタイトルは富山平野を走るあいの風とやま鉄道。やはりこの風景はテレビ的に「受ける」という事なのでしょうか。

番組の「尺」を20分程度使ってから、なぎら健壱さんは富山駅前に。しかし、この風景を見るなり「まだ工事中なんですね〜。」と渋い顔。地元民でなくても、これでは、「鼓門」「おもてなしドーム」には全く太刀打ちできないと感じてしまいます。

鉄板ネタの「金沢セット」に対抗する富山の観光地は、五箇山?立山?とこちらも考えますが、よくよく考えたらどちらも「途中下車」は不可能な場所。立山ケーブルカーを「ぶらり途中下車」する人はあまりいないでしょう。

そうこう考えていたら、なぎら健壱さんから、「あれ、富山って路面電車走ってるんだ!?」と、お約束の振りが出ます。首都圏の視聴者に「鉄道王国富山」が紹介された瞬間です。
そして、お約束のように「たまたま偶然」居合わせたこの一番人気のレトロ電車に乗り込みます。この後の展開が楽しみでしたが、なぎら健壱さんは、レトロ電車を降りてキレイ堂なる画材店を来訪。


ここで、紹介された「モノクロ写真のような鉛筆画」を描く方にインタビューされていました。

富山と「鉛筆画」は何の関係もありませんが、テレビ的な視点では路面電車と組み合わせて、あの「近江町市場」と釣り合いを出すための苦肉の策だったのかもしれません。

この時点で、放送尺はまだ三分の一以上残ってます。
 © Nippon Television Network Corporation

なぎら健壱さんは、あいの風とやま鉄道で次なる場所へ移動。車窓からの風景もこれでもかと紹介。さすが、テレビ屋さんって、絵になる部分をよくご存知です。

  © Nippon Television Network Corporation
しかし、なぎら健壱さんは意外な駅で下車。それは、生地駅。JR時代も特急は通過する駅だったので、富山県民でも降り立ったことがある人は少ない駅です。そんな場所で、まず紹介されたのが、

生地の共同洗い場です。これは、立山からの湧水が豊富にある黒部市生地の各町に設置されているもので、上から、飲料、冷蔵、炊事、洗濯用と生地の方々の生活を支えているとともに、コミニケーションの場でもあります。

これは、かなりの変化球でした。数多ある開業特番の中で、生地の共同洗い場を紹介したのはこの番組が初めてではないでしょうか。

生地地区には、ここ以外の多くの共同洗い場や湧水がありますが、ルールさえ守れば、これらの設備は誰が使ってもいいそうです。

そして、もう一つ紹介されたのが、
回転式可動式橋である生地中橋です。これは、掘り込み港として作られた生地漁港と富山湾を結ぶ水路上に架けられた橋で、漁船が来ると橋が回転して、船が水路を通れるようにします。こちらも、かなりの変化球。

漁船なので、本来は早朝から午前中にかけ20回程度可動するそうですが、なぎら健壱さんが橋の横に辿り着いた午後にも「たまたま偶然」橋が可動して、とても驚かれていました。

  © Nippon Television Network Corporation
番組最後は、なぎら健壱さんらしく居酒屋でしめくくり。こちら魚津の浜多屋さんのホタルイカ珍味盛り合わせは、地元民でもオーダーしたくなる充実した内容です。

   © Nippon Television Network Corporation

 番組のクロージングでも、再度、あいの風とやま鉄道が登場です。


全般を通して感じたことは、数字を稼ぐために鉄板の「金沢セット」で番組を落ち着かせた後は、あいの風とやま鉄道をメインに富山は変化球で紹介したというところでしょうか。

いずれにせよ、電車でぶらりと行ける富山の隠れた名所が首都圏のメディア紹介された事は、とても大きな意義があります。