北陸新幹線をPRしたポスターと言えばJRの「ウフフ」が有名ですが、富山県が独自に製作した物もあります。
それが、「映画一本の時間で、映画のような世界へ。」のこちらのポスターですが、最近はほんとうに富山県を舞台にした映画が多くなりました。

最近では、高倉健さんが主演の「あなたへ」、さらには三浦友和さんが「ちてつ」の運転手に扮した「RAILWAYS 愛を伝えれない大人たち」。それぞれ、立山連峰とどこまでも続く田園風景など富山の雄大な景観を随所に散りばめてあります。これらを最新のハイビジョンテレビで見ていると、地元に住んでいても「ああ、富山に行きたい!」とわけがわからないことを思ってしまうから不思議です。

実は、富山には「富山フィルムコミッション」という組織が存在し、映画やCFに向いている富山の美しい風景を各制作会社に紹介。
よって、富山を舞台とする映画は必然的に「映画のような世界」になるのですが、そんな「フィルムコミッション」が存在しない時代に作られた映画がここに一本あります。タイトルは「螢川」。作家宮本輝が芥川賞を受賞した同名の作品を映画化し、1987年に公開されました。

高齢の父から生まれた主人公が父の死、さらには父の友人の死を乗り越えて大人になっていくというストーリーなのですが、その中には「映画のような」富山はなく、薄暗く曇った街に雪が寂しく降り続ける、いささか雪国をデフォルメしすぎた富山が映し出されています。このシーンに加えて、「父の死、父の友人の死」というストーリーが、富山という場所のイメージを偏った方向へと加速させていきます。
最後に、主人公は「蛍川」で無数のホタルに囲まれる幻想的なシーンの中で、生と死のつなぎ目を感じるのですが、ホタルという「陽」の存在を引き立たせるために富山の街が「陰」として描かれているのも少し残念な気がします。

そんな陰の中の陽として登場した「螢川」ですが、実際にモデルが存在して富山中心部を流れる「いたち川」がそれです。一応は、富山市中心部の住人の憩い場所として川べりは親しまれているのですが、その名前が災いしてか全国的にはもちろんのこと富山市、富山県自身が観光資源としてのアピールは全く行ってません。

そんな「いたち川」、上っていくと二つに分かれ、片方は「松川」と名前と呼ばれています。この「松川」、実はその川べりは富山市中心部の顔としてありとあらゆる媒体に取り上げられてきました。まさに、ネーミングというのは物事を売り出すための大きな要因になるという一例です。「いたち川」を「螢川」としてしまう芥川賞作家もすごいですが、当の富山県民の多くが「螢川」=「松川」と思い込んでいる現実もあります。

そんな、新時代の「螢川」である松川に、今年も船が渡り始めました。
http://www.goodlucktoyama.jp/yuuran/index.html  (富山遊覧船株式会社ホームページより)

松川観光遊覧船と呼ばれているその船が松川を下るとき、富山に春が訪れたことを意味します。そこで、

とやどこからの提案

新「螢川」から映画の富山を堪能してみよう!

松川べりにはソメイヨシノ植えられ、その周辺は桜町、桜木町という地名がつけらているほど、富山市内の桜の名所となっています。そんな桜のトンネルを船で渡っていくのが松川遊覧船なのです。船から桜を見ると言えば、京都の琵琶湖疏水の十石船観光船が有名ですが、この松川は川幅が狭いためその桜の迫力たるや琵琶湖疏水の比ではありません。本当に、映画を見ているような光景を目にします。
さらに、夜にはライトアップ。(富山遊覧船株式会社ホームページより)
こうなると、本当に春の夜に紅色のホタルが舞っているかのようです。

民間の気象会社によると、松川べりの桜の開花は4月4日とのことです。

みなさんも、是非、新「螢川」こと松川で映画のような富山を生で見てください。

尚、いたち川の名誉のために付け加えますが、映画「RAILWAYS」では、いたち川べりが仲を取り戻した夫婦が穏やかに散歩するシーンで美しく描かれています。

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