富山県は県央の呉羽山を境に東側の富山市を中心とした「呉東」と西側の「呉西」に地域が分かれます。

新高岡駅が設置される高岡市は、そんな「呉西」の中心都市です。商都として栄えた伝統があり、明治22年の市政施行時には県庁所在地以外で市政施行された数少ない都市でもあるため、その矜持は県都富山市に勝るとも劣らないものがあります。さらには、読売グループの正力松太郎の出身地が近いことから読売新聞の北陸支社が置かれたり、国宝瑞龍寺を拝するため、富山県の文化の中心地を自負してきました。そんな、高岡市にとって今回の北陸新幹線のかがやき通過問題は、今後の高岡市を揺るがす一大事となったことに疑いはありません。

高岡市は、猛烈な運動により、臨時便一往復のかがやきの停車に成功し、今後も停車枠拡大に動いています。

100万石金沢と県都富山に挟まれ、それぞれ新幹線で10分程度の場所に位置する新高岡がとる秘策を探るべく、開業前の新高岡駅を訪れてみました。

こちらは北口からの全景です。駅前広場は思ったよりも広くとってありません。

実は、新高岡駅は高岡市の郊外のロードサイドとして発展した場所に設置されたため、特に北口については大きな面積の土地を取得することができなかったのです。当初は、既存の高岡駅の併設駅としても検討されたのですが、住宅密集地であるため建設費高騰が懸念され、旧市街地からなるべく至近で土地に余裕ある場所としてこの地が選ばれました。

国宝瑞龍寺までは徒歩圏。

反対側、南口側からの全景です。こちら側は、正面入り口であるにもかかわらず駅周辺の整備が遅れています。

南口側を背に臨んだ風景です。広大な水田の向こうには、イオンモールが。典型的な地方都市のロードサイドの風景です。

 

交番や、レンタカー店も設置予定ですが、まだ稼動前でした。

こちらは、南口側に設置される駐車場。残念だったのは、この日は開業2週間前の日曜日だったにもかかわらず、すべての駐車場が稼働しておらず、また駅前広場も整備が遅れ立ち入り禁止区域が多かったため、多くの方々が車の中から短い時間しか見学できていないケースが散見されました。車を止めて、駅周辺のあちらこちらを散策できた先述の黒部宇奈月温泉駅とは大きな違いでした。

 
二次交通となる城端線の新高岡駅が真下に設置されています。高岡駅までは3分140円で結ばれます。しかし、寒ブリでおなじみの氷見市へは、途中高岡駅で乗り換えが必要です。

いずれにせよ、新高岡駅周辺だけでは瑞龍寺を除き特筆すべき観光資源もなく、高岡市単独で新駅利用者を誘致することは不可能です。そこで、高岡市では隣接する氷見市だけではなく、県境を越えた石川県の能登半島全体を巻き込んだ戦略に出ました。具体的には、能登半島の中心地七尾市まで1時間で移動できるように道路を整備し、新駅から10分程度の場所に新たな高速のインターも設置しました。いわば、能登半島全体のゲートインの拠点として新高岡駅を位置付けたのです。

 
※砺波市公式ページより

整備が遅れた新駅の駅前とは異なり、これらのアクセス関連設備が3月上旬には完成していたことからも、高岡市のスタンスがよくわかります。また、能登半島には石川県最大の温泉地である和倉温泉が控えていますが、その和倉温泉も東京からの観光客が駅名にも冠された手前の宇奈月温泉に流れていくのではないかと危惧していました。いわば、高岡とその和倉温泉が手を組み、さらには全国的にも有名な氷見市を巻き込んで、金沢富山に対抗するための連合を結成したようなものです。実際に、今月から高岡の観光会社のスタッフが和倉温泉の従業員に、五箇山を中心とした呉西地区の観光地の研修を施してます。これは、和倉温泉を五箇山観光の拠点とすることを想定しており、能登半島と呉西地区で首都圏からの観光客を囲い込む算段でもあります。そこで、

とやどこからの提案

新高岡駅からは一直線に能登半島を目指してみよう!

今回の北陸新幹線の新高岡駅の開業を機に、高岡と和倉温泉を結ぶ「わくライナー」が毎日運行されることになりました。 http://www.kaetsunou.co.jp/wakura/wakura.html 人気の氷見市ひみ番屋街にも寄って行けますし、午後便もあるため、午前中に五箇山観光http://www.kaetsunou.co.jp/sekaiisan/sekaiisan-bus-new.htmlや瑞龍寺を見た後に、午後から和倉温泉へ向かうことも可能です。レンタカーを使っても高岡ー七尾間の通行料金は無料となっており、廉価に快適な旅が楽しめます。能登半島を上って富山湾の海の幸を堪能しましょう。

しかし、新高岡駅の今後が気になります。イオンモールだけでは、誰も寄り道してくれないではないですか。

(後日談)
 そんな、今後を気にしていた新高岡駅ですが、北陸新幹線開業後、迷走を続けている感があります。

 
まず、地元では有名になった常時満車状態の駐車場ですが、高岡市ではあいの風とやま鉄道の高岡駅横の駐車場を無料開放することで乗り切ろうとしていますが、城端線との乗り換えがネックになりほとんど利用されていないのが現状です。

駐車場の空車待ち時間はおよそ20分から40分とのこと。これでは、新幹線の定時性と速達性の二つのメリットが相殺されてしまいます。

さらに、駐車場が満車だからと行って新高岡駅の利用者が好調とも言えない現状があります。

 
     (c) KNB  
 
これは、地元局が夕方のニュースで報じた数字ですが、新高岡駅の利用者数は開業3日間ですら当初予想の半数にも満たない状況となっています。しかし、この状況で駐車場が満車という事は、地元から新高岡駅を利用する人は多くても、県外から新高岡に下車する人は多くないという事を意味しているのではないでしょうか。

こちらは、新高岡駅前に並んだレンタカーです。撮影日は日曜。この稼働していないレンタカーの列が上記のことを裏付けています。

また、こちらは伝聞にすぎないのですが、新高岡駅と氷見、和倉温泉を結ぶ「わくライナー」も「エアーライナー」化しているとのこと。
(富山駅と氷見、新湊を結ぶ「ぶりかにバス」は新幹線開業後、利用者が倍増だそうです。こちらは、ちてつのオフィシャル発表。)

このままだと、北陸新幹線の「岐阜羽島」となってしまう可能性も大いにあるので、新高岡駅には、本当にかがやいてほしいところです。